2015年9月 長野県戸倉上山田温泉 カニちゃん

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昭和な喫茶店の看板わんこです

長野県戸倉上山田温泉 カニちゃん@喫茶あもん

 飲食店が連なる戸倉上山田の温泉街。賑やかな通りからちょっと離れた場所にあるのが喫茶あもん。40年間ここで営業を続けている昭和な喫茶店です。お店に入ると看板わんこのカニちゃんが、おっとりとした様子で出迎えてくれました。
 カニちゃんは10歳オーバーのマルチーズ。保護所からやって来たわんこです。いつもおやつを持ってきてくれる常連さんもいて、「〇〇さんが来たよー」とその人の名前を呼ぶと、奥に入っていても、ぴゅーっとお店に出てくるのだそうです。ヒトの言葉を解っているみたいです。カニちゃんを保護所から引き取った息子さんの話によると、「自分を犬だとは思っていない」そうで、普通のドッグフードは食べません。好物は茹でた鶏肉とキャベツ。息子さんがご飯を食べていると、「自分もご飯の時間だ」と思って横にやって来て、ちょうだいちょうだいとおかずをおねだり、かわいいですね〜。
 喫茶あもんは、常連さんの多いお店ですが、お店と共に常連さんも年をとってきました。「犬が好きなので自分も飼いたいのだけれど、一人暮らしだし、年も年だしねえー」と話している方もおられました。そんな常連さんにとっても、カニちゃんは大事な存在。温泉街にある小さな喫茶店の看板わんこは、街の人たちの心を和ませてくれています。(写真・文/西村りえ)

2015年7月 熊本県山鹿温泉 石川ちくわちゃん

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捨て猫から営業部長へ華麗な転身!

熊本県山鹿温泉 石川ちくわちゃん@湯宿 湶(いずみ)

 熊本市から北へ向かって車で1時間余りの山鹿市。ごく普通の市街地の中に、古い歴史を誇る山鹿温泉があります。中心部に共同湯「さくら湯」が威風堂々と建ち、メインストリートの豊前街道沿いに古い造り酒屋や麹屋、明治時代に建てられた芝居小屋「八千代座」、大正時代の洋風建築「山鹿灯籠民芸館」など、歴史と伝統を漂わせる建築物が点在します。

 お湯は肌に優しいアルカリ単純泉。体温と同じくらいのぬる湯なので長湯が楽しめます。
 そんな山鹿温泉のはずれ、静かな住宅街に佇む「湯宿 湶」。ビジネスホテル並の快適設備で素泊まりもできる気軽な宿ながら、自家源泉から豊富に湧き出るPH9.41のツルツルスベスベの美人湯は高級旅館にも引けを取りません。
 「湯宿 湶」には猫の営業部長「石川ちくわ」ちゃんがいます。
 2015年の始め、突然宿の敷地に現れた白茶のメス猫で、子供を産んだばかりだったのか、おっぱいは垂れ下がり、ガリガリに痩せて毛並も悪く、みすぼらしい姿だったそうです。それでも最初からスリスリと寄ってきて、とても人慣れしていました。きっと妊娠したから捨てられたのでしょう。スタッフがかわいそうに思ったものの、飼うつもりのない宿のオーナーからは餌やり禁止令が出されました。
 その後、諦めたのか一週間ほど姿を見せなかったと思ったら、またやってきてスリスリ。餌もあげないのに(こっそりスタッフがあげていた)、しつこく何度もやってきました。何度冷たくされてもめげずにやってくる健気な姿を見て、ついにオーナーも根負け。営業部長として頑張ってもらうことになり、晴れて宿の外猫としての座をGET。スタッフみんなでお金を出し合って避妊手術も施しました。
 「ちくわ」と名付けたのは、オーナーの姪っ子さん。病院に連れて行ったスタッフから苗字ももらい、営業部長「石川ちくわ」が誕生したのでした。
 「ちくわの粘り勝ちです。今ではちくわ目当てのお客さんもいるし、ちゃんと営業部長として自覚しているみたいです」
 この日の営業部長は、駐車場を一回りしてパトロールしたあと、玄関脇の営業部長席に座り、きちんとお客さんを出迎えていました。
(文・写真 /滝野沢優子)

2015年6月 福島県岳温泉 湯くん

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岳で生まれたわんこ君に
温泉街を案内してもらいました

福島県岳温泉 湯くん@宝龍荘

 恒例になりつつある「温泉わんこと温泉街をお散歩」、今回は福島県岳温泉です。岳は二本松市近郊に位置し、60年前より健康作りをテーマにした温泉地づくりをしています。温泉街は安達太良の山へと繋がる坂の道に沿って開けています。
 今回、温泉街を案内してくれるのは2011年6月、岳で生まれた湯くん。湯くん(発音としては「ゆっくん」、以下「湯っくん」と記載)という名前は近所の小学生が付けてくれたのだとか。お散歩してても、「あら、湯っくんじゃない〜」「久しぶりね、元気でいたの」と多くの人たちが声をかけてくれます。そのたびに、嬉しそうに尻尾を振る湯っくん。岳の看板わんこです。
 それでは温泉街へ出発です!まずは坂の上にある温泉神社におまいり。こちらは1150年前にできた県内最古の宮社の一つ。会津界隈でもしばしば名前を聞く、徳一大師ゆかりの薬師如来がおまつり、心身の健康に御利益がありそうな空気の澄んだ社です。そのすぐ下が「湯の森公園」。小さなせせらぎの先に、ベンチやテーブルが置かれていて、木漏れ日の下でお喋りする人の姿もありました。湯っくんも、アスファルトで熱くなった足をせせらぎに浸けて気持ち良さそう。何度も岳に来ているけれども、こんな気持ちのいい公園があるなんて知らなかった。湯っくんのおかげだなあ。
 坂道をもう少し下っていくと、手作りピザがおいしい食事処「恵美寿屋」。湯っくん、ぐんぐん店の後ろに進んで行きます。裏手には真っ黒わんこ2匹。湯っくんのお母さんと兄弟です。じゃれ合ったり、舐め合ったり、お互い、体中で再会を喜びあっている様子。ニンゲンもこんな風に素直に喜びを表現できるといいなあ。さらに下り、信号手前に岳温泉の観光協会。ここにはリードを繋げるフックがあるので、湯っくんも少し休憩です。
 信号を渡ると桜坂の入り口。向かって左手が共同湯「岳の湯」。道向いには柴犬コロくん。コロくんは10数年間、桜坂を守ってきました。ふだんは穏やかな2犬ですが、そこはオス犬同士、吠えないワケはありません。が、ここはコロくんのテリトリー、湯っくんは端っこを遠慮がちに通過させてもらいました。桜坂の途中には足湯もあって、花の季節には足湯に浸かりながら花見ができます。桜坂の先には鏡ヶ池公園。周囲の樹林の緑が今や盛りと萌え出していて、歩いているだけで木々のパワーをもらえるよう。木道や東屋、ベンチが置いてあり、花壇もキレイに整備されています。夕方の景色もすごくステキで、お散歩にもぴったりです。
 湯っくんと歩いた1時間で、岳温泉がぐっと身近に感じられました。岳は、上にも下にも公園があって、その間をゆるやかな坂道が通っています。しっぽりした湯の里というよりは、高原にある公園温泉的な雰囲気。お散歩場所にも困りません。ワンちゃん連れで訪れるのにも、いい温泉地ですよ。(文・写真/西村りえ)

2015年5月 千葉県養老渓谷温泉 ネちゃん、なおきくん、ゆうたくん

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ホームにごろんと寝そべる駅の人気者
3匹の駅ねこさんは人が大好き!

千葉県養老渓谷温泉 ネネちゃん、なおきくん、ゆうたくん@養老渓谷駅 

 房総半島の山あいを走る小湊鉄道。開業当時からの小さな木造駅舎や大切に手入れをされた昔ながらの車両は、ノルタルジックな風情に溢れ、訪れる人を魅了し続けています。ネネちゃん、なおきくん、ゆうたくんの3姉弟は養老渓谷駅に暮らす駅猫さん。ホームでひなたぼっこしたり、お昼寝したりのんびりと暮らしています。
 数年前、お母さん猫が駅に捨てられてしまい、かわいそうに思った駅務員の本永廣子さんがお世話をし始めた頃ネネちゃんが生まれ、翌年なおきくんとゆうたくんが生まれました。ほどなくお母さんが亡くなってしまい、なおきくんとゆうたくんはお母さんの亡骸に寄り添っとミャーミャーと鳴いていたとのこと。そんな2匹を母親がわりに育てたのはお姉さんのネネちゃん。他の猫から2匹を守るなど一生懸命子育てをしました。
 3匹とも人が大好き。ネネちゃんは少し警戒心があるけれど優しくて穏やか、なおきくんはいつでも人と一緒にいたくてお客さんの後ろ姿をじっと見つめ、ゆうたくんは毎回最後にご飯食べるちょっとシャイな男の子。お客さんも駅員さんもみんな猫たちに優しく接してくれるのでどの子もとても穏やかな表情をしています。
 列車が行き交う場所なので、ホームは危険と隣り合わせ。でも3匹の猫たちは列車が来るとどんなに気持ちよくお昼寝をしていてもサッとよけるのだとか。そしてお客様の妨げにならない場所に移動します。長年お世話をしている本永さんが、しっかりしつけてくださいました。
 本永さんは言います。「待ち時間が長い駅なので、猫たちはお客様にひとときの安らぎを与え、とてもいい仕事をしてくれています。そして名前をつけてもらったり首輪をプレゼントしてもらったり、たくさんの人に支えられ、愛されてとても感謝しています。この触れ合いを通して動物を優しく迎えられる人が一人でも多くなればと願います」と。
 新緑が心地よい季節です。養老渓谷は養老川の渓谷美を楽しめる景勝地。のんびりとローカル線に乗って出かけてみませんか?
(文/太田水美 写真/内川文子・西村りえ)

2015年4月 福島県いわき市 LYSTAさん(番外編)

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「ねこ温泉 いぬ温泉」のメンバーで
犬猫保護施設、リスタさんを表敬訪問。

福島県いわき市 LYSTAさん

 4月某日、「ねこ温泉 いぬ温泉」の滝野沢優子さんの案内の元、にゃらんのカメラマンさんたち数名でリスタさんを表敬訪問してきました。リスタさんは福島県いわき市にある犬猫保護施設。ここには、東日本大震災の後に生まれ、ゴーストタウンで育った犬も保護されていました。人間を見たのが初めての犬たちは、自分の小屋から一歩も動こうとしませんでした。人を警戒し、信頼していない、とても哀しい目で、私を見つめていました。この犬たちは、まだ、人間の愛情を感じられていないのだろうと思います。その日1日だけ訪問した私は、少しでも、「人間は怖くないのだ」という事を伝えようとしました。ですが、この犬たちの抱えた長年の思いを、1日訪問しただけの私の力で、少しでも改善に向かわせたいといった願いは軽率で浅はかな事であるということも気づいていました。
 ここで保護された犬たちは、ペットショップで買った犬よりも、育てるのがタイヘンかもしれません。ですが、愛情を注ぎ続けたら、きっと、一生涯続く堅い絆がお互いに生まれるのではないかと感じました。
 猫も本当にかわいくて、すぐに懐いてくれ、膝の上に乗ったり、指をペロペロ舐めてくれたりしました。
 リスタさんは、しっかりとした管理下で犬猫を保護しお世話をしていました。ですが犬や猫の数に対してスタッフの数があまりにも少ない。70匹の犬猫たちを数名のボランティアと、数人のスタッフでお世話をしているのです。こういった状況が少しでもたくさんの人に伝わっていけば…。また、犬猫を飼いたいと思っている方、もしくは周りで検討している方がいましたら、一度、保護されてる犬猫の里親になる事も考えてみてほしいと思いました。
 リスタさんのホームページはこちらです。犬猫里親お見合いの会も定期的に開催し、里親募集をしています。 http://www.lysta.org
(文/半田美樹 写真/筒井聖子)

*にゃらんのカメラマンさんがリスタさんにいるすべてのねこの写真をボランティアで撮影してくれました。本当にありがとうございました!

2015年3月 群馬県伊香保温泉 チュピッピくん

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わんこに育てられた
白ねこくんの物語です。

群馬県伊香保温泉 チュピッピくん@「再会」

 11年前、伊香保温泉の石段近くの、とある民家の前で4匹のねこが生まれました。その中の1匹が真っ白白のチュピッピくん。生まれてすぐにお母さんねこが、チュピッピくんをくわえて「再会」にやって来たのだそうです。
 「再会」は地元っ子にも人気の飲食店。最初、女将さんは、「ねこを飼うのはどうもなあ」と躊躇したのだそうですが、飼い犬だったオス犬のクラウディアくんが、ひと目でチュピッピくんを気に入り、我が子のように世話を始めたと言います。「どちらも真っ白だったので、自分の子供だと思ったのかな」と女将さん。
 クラウディアくんは、突然現れた赤ん坊ねこの、体やお尻を舐め、夜は寄り添って眠りと、一生懸命子育てをしました。チュピくんも、クラくんをハハと思ったのか、お腹にもぐりこんで、小さなおっぱいを舐め舐め。そのせいでクラウディアくんは、おっぱいに炎症がおきてしまいましたが、それでも我慢して、チュピくんにおっぱいを舐めさせていたのだそうです。
 当時の写真を見せてもらうと、クラくんは、優しい視線をチュピくんに向け、チュピくんはクラくんに体をくっつけて甘えています。2匹の間に流れているあたたかい愛情が伝わってくる写真ばかりでした。クラくんは2年間、子育てをし、大きくなったチュピくんを見届けるように亡くなりました。チュピくんは、動かなくなったクラくんの手をいつまでもペロペロと舐め続けていたのだそうです。
 いぬに育てられたチュピッピくんは、お手ができて、人の言葉を理解する「いぬのように賢いねこ」になりました。現在11歳。「再会」の2階で元気に暮らしています。お店には出てきませんが、「会いたい!」と言えば、会えることもありますよ。女将さんが作るおいしい料理をいただきながらチュピくんの話を聞くのはにゃんとも幸せ!伊香保へ行ったらぜひお立ち寄りください〜。
(文・写真/西村りえ)

2015年2月 青森県温湯温泉 タロウくん

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ふっくらビーグル・タロウくんに
温泉街を案内してもらいました。

青森県温湯温泉 タロウくん@ドライブイン西十和田

 こんにちは。ボクはタロウ。9歳のビーグル犬だよ。ボクの家は、国道沿いでドライブインをやっているんだ。なので、ごはんは余りものをもらっているんだ。そりゃあドライフードよりおいしいからさ。ちょっとボッチャリになっちゃったんだよ。太っていても走るのは得意。雪の上も大好きだよ。
 なになに、お散歩つれて行ってくれるの?じゃあ、温泉街の案内をするよ。いい、ここは子供たちが遊べる図書室だよ。通りには古い木造の店なんかもあってね、建築に興味がある人がよく見に来るんだ。坂を進んで行くと、街の中心にあるのが共同湯。「鶴の湯」っていう名前なんだ。この辺りはいつも人が多いんだよ。そう言えばボクの家にも温泉が引かれててね、昨日はお母さんが温泉で体を洗ってくれたんだ。なので毛並、いいでしょ?お母さん、ボクのこと、亡くなったお父さんの代わりみたいに思ってくれてて、すごく大事にしてくれるの。ボクもお母さんが大好きなんだよね。お母さんが作る料理もおいしいよ。

2015年1月 山梨県石和温泉 クロちゃん

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温泉入って映画を見て、
かわいいサビねことも遊べます。

山梨県石和温泉 クロちゃん@テアトル石和

 山梨県笛吹市、石和温泉の映画館・テアトル石和の看板ねこ、クロちゃんです。
昭和36年、ブドウ畑の真ん中に大量のお湯が湧き、それをきっかけにホテルや旅館が次々と建設されたのが、石和温泉のはじまりです。新しく出来た温泉街には、遊興施設も相次いでオープンし、テアトル石和もその頃に誕生しました。当初は風俗映画やヤクザ映画が専門でしたが、現在は、名画やインディーズなど、こだわりの作品を上映しています。
 オープン以来、ここには常に看板ねこがいました。クロちゃんは、その3代目。経営者である老夫婦が帰宅した後は、朝まで建物の番をしたり、ときどきネズミを獲ったりと、映画館には欠かせない住み込みの従業員として働いています。また、膝の上に乗るのが大好きで、とても人懐っこいクロちゃんは、訪れるお客さんや映画人にも愛嬌を振りまいてきました。館内には、ねこグッズ・コーナーも設けられ、宣伝や物販担当としても、決して楽とはいえない映画館の運営に一役買っています。
IMG_5689.JPG 服務中なのにドアを開けてもらって日なたぼっこに出かけたり、業務そっちのけでお母さんがくれる煮干しをパクついたり、ねこならではの勤務態度ではあるけれど、それでも、映画館への貢献は多大なクロちゃん。ねこ支配人がお出迎えする「ニャン・シネマ・パラダイス」誕生の日も、そう遠くないかもしれません。
(文/くものはて 写真/西村りえ)

2014年12月 長野県野沢温泉 ショースケくん

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マイペースでケンカ上手。
看板にゃんこのお勤めに励んでいます。

長野県野沢温泉 ショースケくん@桐屋旅館

 野沢温泉の麻釜通りに面した桐屋旅館は、明治21年創業の老舗宿。明治時代には郵便局をやっており、建物の前には今でも現役の赤いポストが設置されている。
 こちらで宿ねことして暮らしているのがショースケくん(2歳)。宿のこどもが拾ってきた捨てねこで、最初は、「おぎのやの釜飯の器に入るぐらい小さかった」のだとか。外の世界で生まれたからか、持って生まれた性格か、人との距離はつかず離れず。撫でさせてはくれるけれども、あんまりベタベタとは懐かない。飼い主さんの見立てによると、性格は「ワイルド」。よそのねことのケンカも多く、その声が麻釜あたりに聞こえることもあるのだそうだ。
 自由に出歩くショースケくんを、この日、1時間ほど追跡してみた。
 最初は床暖房が気持ちいいお休み処の床でゴロゴロ。次に、庭の見える窓辺に移動し、伸びをしたり、庭を見張ったり。その後、またも床暖房でゴロゴロしたあと、「写真、撮られるの鬱陶しいんだよ」とでも言いたげに、きりりとカメラに視線を向けて、ぷいっと玄関前のラウンジへ移動。あたりをぐるりと見回りしてから、自動ドアを開けて外出していった。
 通りを横切り、温泉が流れる水路へひらりと飛び上がる。と、そこに、葉っぱが1枚2枚流れてくる。激しく反応するショースケくん。葉っぱがサカナに見えたのか、何とか仕留めようと躍起になっている。その動きがあんまり可愛いものだから、つい上流から葉っぱを流すお節介をしてしまう。すると、ショースケくん、「おいおい、お前が流しているのか!」といった視線でこちらを見た後、すっかり葉っぱに興味をなくし、さらに上の草むらへとジャンプ。そこで見失ってしまった。
 人に媚びず、一人遊びが上手なねこらしいねこショースケくん。帰れる家もある上に、自由に温泉街を歩きまわっている。ううーん、これは何とも幸せな「にゃん生」ではないか。ねこが大好きで、自由に大事に育ててくれている桐屋の皆々様に、感謝感謝でありますぞ。
(文/西村りえ 写真/西村りえ)

2014年11月 山形県蔵王温泉 ほたるちゃん

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お見送りも写真撮影もバッチリ。
看板わんこのお勤めに励んでいます。

山形県蔵王温泉 ほたるちゃん@大平ホテル

 蔵王連峰の西麓、標高800mの高原に位置する蔵王温泉。1900年という古い歴史を持つ温泉地で、白濁した強酸性の硫黄泉が特徴です。国内有数の規模を誇るスキー場もあり、冬も大勢のスキー客で賑わいます。
 そんな温泉街を見下ろす高台に立つ大平ホテル。洞窟内から湧き出す自家源泉を利用し、貸切露天風呂ほか趣向を凝らしたお風呂はどこも源泉掛け流し。ホテル内で湯めぐりができるのが自慢です。
 このホテルで看板犬として頑張っているのが、「ほたるちゃん」。ホタルが舞う時期にやってきたことから、この名前になりました。バーニーズマウンテンとしては、ちょっと小柄な、7歳になる女の子です。いつもフロント周辺にいてお客さんの接待をしています。しっかりカメラ目線で記念撮影にも応じてくれるので、お客さんも大喜び。
 大平ホテルにはペット連れ客専用フロアもあり、ペット用のお風呂や源泉足湯、室外・室内ドッグランほか、酸素ルーム、ウルトラソニックハイドロバスなどハイテク設備まで揃っています。そのため犬連れのお客さんにも人気で、中には1年で20回も利用する常連さんもいるそう。
 私たちが訪れたのは、日曜日の午前中。週末で宿泊客が多かったせいか、ほたるちゃんはややお疲れモードでしたが、お客さんを送り出したあとは、外で思い切り遊んでいました。仕事のときとは違ったやんちゃな表情に見ているこちらも、ほっこり。やっぱり、犬だって人間と同じようにオンとオフの切り替えは大事なんですね。
 蔵王の山にはもう雪が降り始めました。スキーシーズンはすぐそこ。また忙しくなるから、がんばらなくちゃ、ね。
(文/滝野沢優子 写真/滝野沢優子、西村りえ)

2014年10月 栃木県那須温泉 チャッピーくん

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旅ねこ番付なら横綱間違いなし!?
「ひみつ基地」の看板猫チャッピーくん。

栃木県那須温泉 チャッピーくん@ペンションひみつ基地

 那須高原の一画、ハイランドパークのすぐ近くに「ひみつ基地」という、なにやら怪しげな名前の温泉ペンションがあります。名前はヘンですが、渓流沿いの露天風呂と囲炉裏端でのアットホームな接待が好評で、リピーターも多い人気の宿です。
 ここで看板猫を務めているのが、茶トラのイケニャン「チャッピー」(3才、オス)。おすまし顔とすっと伸びた長い尻尾が自慢です。
 ペンションのオーナー夫妻は、もとバイク屋さんで、「ひみつ基地」というのは、そのお店の名前だったそうです。
 2008年、ペンションをオープンさせたときは前オーナーから引き継いだワンコ2匹がいましたが、行方不明になってしまい、その後、2010年1月に突然、現れたのが初代看板猫のくろちゃんでした。外猫として可愛がられるうちに「ひみつ基地」のお客さんの接待もできるようになりました。
 しばらくして、くろちゃんがお嫁さんの「キャサリン」を連れてきました。この夫婦から産まれたのが、「チャッピー」のお母さんの「とらちゃん」と「しろちゃん」です。
 一時期は12匹もの大所帯になり、これは大変、と避妊去勢手術を施して可愛がっていましたが、くろちゃんが再び旅に出てしまったり、他の子猫が里子に出たりといろいろあって、くろちゃんファミリーで唯一残ったのが、「チャッピー」。
 オーナー夫妻の愛情を一身に受けて成長し、今では看板猫としての役割をしっかりとわきまえ、接客を頑張っています。
 そのおかげで、「猫のいるペンション」としてすっかり定着し、「チャッピー」目当てのお客さんも多いそうです。
 「チャッピー」は温泉好きなオーナー夫妻と一緒にときどき、旅にも出ます。宿には泊まれませんが、快適な車中泊ライフをしながら九州まで行ったこともあり、長旅も得意です。旅ねこ番付があったら、横綱は「チャッピー」に間違いありませんね。
(文/滝野沢優子、写真/田中瑞生)

2014年 9月 青森県李沢温泉郷 ポン太くん

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かけ流しのモール泉で
元気いっぱい!

青森県李(すもも)沢温泉 ポン太くん@李沢温泉郷

青森県東部、東北町と七戸町の境のあたりに広がる平野を車で走っていると、アスパラガスを栽培しているビニールハウス群が現れます。入口にある小さい看板をお見落としなく。ここを曲がり、未舗装道路を進んだ先にある秘湯が李(すもも)沢温泉郷です。
 地下750メートルから湧き出すお湯は、薄い茶褐色でスベスベとしたモールのお湯。42,5度の適温のお湯が毎分563リットルも湧いています。湯量豊富なこの温泉水を使って、李沢ではスッポンの養殖も行われています。養殖場のオーナーを任されているのがポン太くん。元気いっぱいの柴犬です。ニンゲンオーナーの甲地さんによると、ポン太くんは今春、李沢にやって来たのだそうです。コロンとした赤ちゃん犬だったポン太くんは、人にくっついて離れない甘えん坊。愛くるしい表情だけど、どこか寂しげな目をしていて、思わず抱きしめてしまいました。
 ポン太くんは遊ぶのが大好きです。お客さんを見つけると、すごい勢いで駆け出し、足にじゃれついたり、甘噛みしたり…。「こら、ポン太」と甲地さんが叱ると、一瞬、しゅんっとはなるものの、すぐさまアピール開始。ビニール袋を加えてクネクネしたり、人の気を引こうと躍起です。
 もう一つ、ポン太くんがこよなく愛しているのが三毛猫のベタ子ちゃん。野良ねこですが、今は李沢温泉に住みついています。ベタ子ちゃんの気を引くため、これまたおかしなダンスをしたり、通せんぼうをしてみたり、熱心に努力をしています。その甲斐あってか、「仲良く並んで眠ったりもしていてねえ」と甲地さんも目を細めていました。
 ポン太くんは温泉も大好き。甲地さんが自宅用のお風呂に浸かるときには洗い場までお供をし、入浴中の甲地さんの腕に手をかけて、べろべろお湯を飲んでいます。「そのせいでこんなに元気なんだべか?」と甲地さん。李沢のかけ流し温泉は、ポン太くんの元気の素なのかもしれません。
(文/内川文子 写真/内川文子・甲地慎一)
*内川文子さんが書いた「ポン太の仕事」というお話が李沢温泉に置いてあります。李沢温泉に行ったら読んでみてくださいね。

2014年 8月 青森県下風呂温泉 てんちゃん

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壁の間から救い出され
今や人気の女将ねこに

青森県下風呂温泉 てんちゃん@まるほん旅館

てんちゃんの生まれ故郷は、なんと壁の中。
2001年春のこと、壁の中からの鳴き声に気付いた旅館の方が、壁を切り出して発見したのだそうです。きょうだい2匹はよそへもらわれ、てんちゃんだけが旅館に残りました。

てんちゃんは見ての通りの美人さんだし人気者。 2009年には『ようこそ女将猫』という本の表紙を飾ったんですよ。宿泊したお客さんが写真を雑誌(猫びより)に投稿し、並み居る美猫の中から選ばれたというんだから、トップモデルみたいでしょ?!。

てんちゃん、甘えるのはちょっと苦手なんですって。ほんとは甘えたい時もあるんだけど、そんな時でも素振りは見せず、「撫でたいなら撫でろ!」という感じで背中を向けて座っているだけ。自分からすり寄ることはまずありません。でも、たまーに、仲良くなる人がいるそうです。どんな人がタイプなのかは、飼い主である、”人間の女将さん”にもわからないそう。こりゃあ直接会ってみるしかない?

女将さんからは、てんちゃんの好物も教えていただきました。
・開けたてのおかか
・イカスミ入りさきいか
・北海動産の鮭
・あんこ
だそうで、なんとも個性的なこだわりのline up!。ますます興味をそそられます。
ほんとにほんとに、会いたくなっちゃいました。

おかか袋とあんこを抱え、下北バスにガタゴト揺られ、訪ねてみようか下風呂温泉。
(文/加茂卓子 写真/谷口清和)

2014年 7月 長野県奥山田温泉 ディラン君

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体はとってもたくましい…けれど
猫パンチにはかないません

長野県奥山田温泉 ディランくん@ヴィラ藤屋

 『ボブ・ディラン』のディラン君ではありません。アメリカの青春ドラマ『ビバリーヒルズ青春白書』に登場する不良少年ディラン・マッケイ。彼の大ファンだったこの宿の娘さんが、先代のゴールデンレトリバーをディランと呼び始め、ディラン君自身もすぐに名前を覚えてしまったのだとか。「気付いた時にはもう変えられなくなっていたの(笑)」とオーナー夫人。初代ディラン君は11歳で病死、悲しみの淵に沈むご主人は、「もう犬を飼うのはやめよう」と口にするほど落ち込んでしまいました。そんな時、20数年来の常連さんが「こんな素晴らしいロケーションで犬を飼わないなんて」と、プレゼントしてくれたのが2代目ディラン君です。本当に、ここヴィラ藤屋は北アルプスの山々を望む標高1500mの広大な山田牧場の中。「日本のスイス」とも称される美しい自然に囲まれています。
 生後 2ヶ月でこの地にやって来たディラン君は、跳んだり跳ねたり、大好きな雪遊びで筋骨たくましく成長しました。ところが……。取材時、ケガしていた足はなんと「チワワに噛まれたから」。猫と遊びたくて近づき、猫パンチを食らって耳から流血したこともあるそうで、大きな体で小さな動物にやられちゃうトホホなエピソードには事欠かないのだとか。でも、決して吠えたり噛んだりしない優しいワンちゃんなのです。「この子はそもそも噛むことを知らないんじゃないかしら?」とオーナー夫人は笑います。
 野生動物にも興味津々。雪の中、カモシカの赤ちゃんと戯れていたり、ある時は木を見上げて尻尾をフリフリ。視線の先には森のくまさん…と書くと微笑ましいのですが、熊出没!の緊急事態です。「そ、それはやめよう」と足早にその場を後にしたのだとか。
 ディラン君は人も大好き。常連さんは、自分の犬に会いに来るかのように接してくれるのだそうです。ディラン君もそれが嬉しくて伏せをしてお客様を待っていたり、2階の客室から足音が聞こえるとすかさず何か咥えてプレゼント。小さな子供たちの中にいつの間にか一緒に混ざって遊んでいた、なんてことも。玄関先にちょこんと座っているディラン君の可愛らしい表情を見ると、人懐こく優しい子だとすぐに分かります。一匹狼だった『ビバヒル』のディラン君とはどうやら真逆のキャラクターのようですね。
 Facebookではディラン君専用ページも公開中(『Yamabokuヴィラ藤屋 ディラン』)。ディランファンの憩いの場になっています。
ディラン君のページはこちらです
https://www.facebook.com/Yamabokufujiyadylan?hc_location=timeline
(文/太田水美 写真/西村りえ、ヴィラ藤屋)

2014年 6月 北海道見市温泉 じゅんちゃん

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露天とあわびが名物の温泉宿で
ご長寿犬ちゃんに出会いました。

北海道見市温泉 じゅんちゃん@見市温泉旅館

 見市温泉は函館から北西方向に約100キロ。あわびで有名な北海道熊石から山の中へと入って行ったところにある一軒宿です。見市川のほとりに位置し、小ぶりながらも清流を臨む露天風呂は格別の気持ち良さ。この春、念願かなってお出かけしてきました。
 チェックインを済ませてお部屋へ行こうとしたところ、女将さんが帳場の奥へ向かって「じゅんちゃん、じゅんちゃん」と呼びかけるではありませんか。はて…?、どなたかご紹介していただけるのかなと思い待っていると、つぶらな瞳が愛らしい看板犬『じゅんちゃん』がご挨拶にひょこっと顔を出してくれました。
 うわっ、か、かわいい!一目会ったその時からもうメロメロになってしまいました。女将さんはじめ皆さんに愛されているじゅんちゃんは御年16才!「昔はそれはそれは立派な番犬だったのよ」って女将さんは愛おしそうにじゅんちゃんを眺めます。今は悠々自適な隠居の身。山の温泉宿でのんびりと過ごしてます。
 あんまりかわいいので、お顔を撫でまくってしまいましたが、嫌がることなく、「おいおい、そんなに撫でなくても・・・」って甘噛みして優しく応じてくれました。愛情を注がれ、可愛がられてきたじゅんちゃんは、表情やしぐさにも、幸せオーラが刻まれているよう。見ているだけでこちらもハッピィな気持ちになってきました。
 心から愛されているじゅんちゃん、これからも長生きしてね。次におじゃました時にも甘噛みしてね〜。
(文・撮影/大山芳香)

2014年 5月 鹿児島県妙見温泉 あんまんちゃん

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「ミナミ先生、
あんまんは元気に暮らしています。」

鹿児島県妙見温泉 あんまんちゃん、はなちゃん@秀水湯

 秀水湯は妙見温泉の端っこのあたり、湯治のできる素朴な宿です。ここには2匹のねこが暮らしています。あんまんちゃんとその娘のはなちゃんです。あんまんは、人の声がすると出てきて、「どんな人かなあ?」と、ウロウロしたあと、玄関先にちょこんと座ってお出迎えしてくれます。
 「あんまんは頭がいいねこなんです。扉をあけて欲しいときには、玄関先にぶら下げている竹筒をかたかた揺らして音をたてる。知らんぷりしていると、仕方ないなあといった具合に自分でドアを開けて入ってきます。人のことを良く見ていて、言葉も解っているみたいです」と女将さん。
 あんまんは、12年前、中学生だった娘さんが、美術のミナミ先生からもらったねこなのだそうです。先生は「本当に本当に大切にしてくれる人に」ということで、フードやねこグッズと一緒に、宝物を渡すように大事に娘さんに託したと言います。その娘さんも現在26歳。お母さんになりました。
 あんまんもその後、6匹のこどもを生みました。が、1匹は交通事故で、2匹は病気で亡くなり、あと2匹はもらわれていき、鼻先の黒いはなちゃんだけが秀水湯に残ったのだそうです。
 「娘も学校を卒業してだいぶんたち、ミナミ先生がどうしておられるか判らなくなってしまいました。今でもどこかであんまんのこと、思い出してくれているのではないかなあ。ミナミ先生に、あんまんは元気ですよ、といつかお伝えしたいなあと思っています」。
 ミナミ先生、あんまんと娘のはなちゃんは、時々、温泉のお湯を飲みながら、妙見温泉で元気に仲良く暮らしています。
(文・写真/西村りえ)

2014年 4月 東京都式根島 島ねこたち

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島を守る小さなレンジャー。
あたたかい海の温泉も湧いています。

東京都式根島 島ねこたち@松が下雅湯

 各地で温泉にゃんこやわんこの取材をしていると、時々、不思議な話に出会います。今回は式根島で地元の人から聞いたお話を紹介したいと思います。
 式根島の温泉、「松が下雅湯」へと向かう途中に、「大王神社」という祠があります。地元の人によると、この神社は猫ゆかりの神社なのだそうです。
 江戸時代、式根島では年貢として塩を納めていました。ところがある日、上納塩が1俵、足りなくなっていました。疑われたのが船頭の新八。きびしく責め立てられ、ついには煮えたぎる塩釜に身を投じてしまいます。妻のお福も後を追います。2人が亡くなったあと、かわいがっていた猫が化け猫になってしまったため、ここに神社を建てたという話でした。猫好きな人間からみると、飼い主の怨みを晴らすため、化け猫にさえなるぐらい、実は猫は情け深い、という話にも受け取れます。
 文献によると式根島はかつて犬が禁忌の島だったのだそうです。猫島で知られる田代島も、かつては犬が禁忌だったとのこと。そのため猫が増えたということもあるのかもしれませんが、式根島では、たびたび猫と出会いました。島でのんびりと暮らす猫を見ていると、ほんと気持ちが安らぎます。この猫たち、式根島の小さな平和を、猫独特のオーラで守っている、そんな風にも感じられました。
(文/西村りえ 写真/池野彩子、西村りえ)
写真は東京愛ランド様http://islands-love.comよりご提供いただきました
* 話は地元の人から聞き取りをした話です。聞く人によって話は違っているかもしれませんが、御了承ください。

2014年 3月 大分県湯平温泉 名前のまだない親子ねこ

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ネコの飼い主さん募集中。
それまで湯平で暮らしています。

大分県湯平温泉 名前のまだない親子ねこ@旅館大吉

 石畳と路地の温泉地・湯平は、山頭火も寅さんも訪れたノスタルジックな湯の町です。石畳の入口付近、道幅が急に細くなる角の場所に、大吉さんという小さな宿が立っています。1年ほど前、おかみさんが外に出ると、ガレージの入口に1匹のねこがちょこんと座っていました。人を怖がらず、触ってもなでても平気な様子に、「これはノラじゃなくて捨てねこだなと思った」と言います。
 ねこはずっとその場を動きません。やせて具合が悪そうでもあり、かわいそうに思って、ごはんをあげていたところ、5月ごろ、洗濯機の中で3匹の子ねこを産み落としました。この3匹、残念ながら生まれて数日後に亡くなってしまいました。元々動物好きなおかみさん、3匹のなきがらを土に埋めて弔ってあげました。
 昨年の夏、親ねこはまたも3匹の子ねこを生みました。生まれてしばらくたった頃、今度は、おかみさんに子ねこを見せに来たのだそうです。本当にかわいい子ねこたちでしたが、宿や家が軒を連ねる温泉街の中では、動物を飼うことができません。飼い主さんを探していたところ、定年退職したご夫婦が「子ねこが欲しい」とやって来ました。2匹がすぐに外に出てご夫婦に近付いたので、「じゃあ、この2匹をもらいます」という話になり、おっとりとした1匹だけが残ったのだそうです。
 現在親ねこと息子くんは、ガレージのケージの中で暮らしています。狭い場所なのでストレスがたまるのか、ミャーミャーと良く鳴きますが、ケージから出ると、鳴きやんで元気に動きまわります。2匹とも人が大好きな様子。親ねこはごろりごろりとお腹を見せ、なででなでてとアピール。息子くんは、あっちにこっちに動きまわり、ヒモを見せると喜んでじゃれつきます。小さな子どもが触っても逃げたり爪を出したりもしなかったのだそうです。かなり性格のいいねこたちです。「ケージの中だと本当にかわいそうとは思うのですが、。今の状況ではどうしようもないんです。2匹一緒だとありがたいけれども、息子くんだけでもどなたか飼ってくれないか」と女将さんは考えています。ねこを飼いたいと思っている人がいたら、ぜひ大吉さんに連絡をしてください。お湯に浸かりがてら、ねこにも会いに行ってみてください。ほんとかわいいねこたちです。大吉さんの電話は0977・86・2414です。メールアドレスは「ねこ温泉いぬ温泉」まで。onsennekoinu@kaishagokko.comとなります。
(文・写真/西村りえ)

2014年 2月 神奈川県箱根強羅温泉 チャッピーちゃん

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ちょっと体は弱いんだけど、
ほぼ毎日出勤しています

神奈川県箱根強羅温泉
チャッピーちゃん@小林物産店

 箱根強羅駅前に並ぶ数軒の土産物店。その端っこにある「小林物産店」は、ねこ好きな奧さんやスタッフさんたちがいるお店です。お店にほぼ毎日出勤しているのが12才になるチャッピーちゃん。「チャッピーちゃんいますか?」と声をかけると、「いるわよー、ほらここ」、チャッピーちゃんは、イスの上やカゴの中で、タオルや毛布に包まれ眠っていることが多いようです。腰の神経に問題があるのか、あんまり体が丈夫ではないみたい。と言うのも、チャッピーちゃんのお母さん、おそらく妊娠中に除草剤を飲んだらしく、出産後すぐに亡くなったのだそうです。一緒に生まれた兄弟も全員死んでしまいました。1匹だけ生き残ったチャッピーちゃんも、鼻血が止まらず危なかったのですが、病院に通って点滴を打ち、生き延びることができました。その後、飼い主さんたちのおかげで元気になり箱根の山で12年、お店の皆にかわいがられて、ニンゲンが大好きなねこになりました。ラッキーねこのチャッピちゃんが着けている箱根寄木細工の首輪は、お土産によく売れるんだそうですよ。(写真・文/西村りえ)

2014年 1月 静岡県修善寺温泉 モモ子ちゃん

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軒先ですやすや眠るのは『猫の恩返し』?
伝統工芸品店の看板猫ちゃん

静岡県修善寺温泉
モモ子ちゃん@修善寺彫松丘

 温泉街の外れにひっそりと佇む『指月殿』は、この地で非業の死を遂げた鎌倉幕府二代将軍源頼家の冥福を祈り、母・北条政子が建立した御堂です。指月殿への道すがら、石畳の坂道を登ると軒先ですやすやお昼寝をする猫のモモ子ちゃんに出会えます。
 ここは『修善寺彫松丘』。竹の表面に彫刻刀一本で美しい文字を彫る伝統工芸品のお店です。10年ほど前、心優しいご主人の鍵和田松丘さんが猫の里親募集に応募、「ガリガリに痩せ、怯えた目をしたボロボロの子猫。虐待されていたようだった」と当時を振り返るご主人ですが、モモ子ちゃんはとても穏やかな優しい猫ちゃんに育ちました。この性格はご主人譲りのようです。通りがかりのお客さんがモモ子ちゃんを見つけてふらりと店内に寄ってくれるそうで、ご主人への恩返しか?しっかり招き猫の役目も果たしています。誰がさわっても大丈夫!ただしワンコを見た時だけは威嚇をするとのこと。優しさの中にも強さを秘めた崇高な三毛猫さんは、匠の店にとてもよく似合いますね。(文/太田水美 写真/西村りえ)

2013年 12月 福島県土湯温泉郷 小次郎くん

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赤いバンダナがキマッてる。
ぶさかわいい看板パグ犬!

福島県土湯温泉郷 小次郎くん@赤湯好山荘

  福島県中通りと会津を隔てる、安達太良山
 標高1700m、高村智恵子が「ほんとうの空」と呼んだ広い空に穏やかな稜線を描いて聳える名山です。その安達太良山の北麓に赤湯温泉があります。
 山小屋風の素朴な佇まい、アットホームな雰囲気に加え、鉄泉(赤湯)と硫黄泉の2種類の泉質を楽しめることで人気の一軒宿です。
 ここの看板犬をしているのが、パグ犬の小次郎くん(10歳)。黒いつややかな毛並みに赤いバンダナがとってもお似合いです。仙台にある信用できるブリーダーさんのところで生まれた4兄弟の1匹で、仙台では「福島ちゃん」と呼ばれていたそうです。宿の看板犬となるべく、生後2ヶ月で赤湯温泉にやってきました。
 パグ犬だけにちょっととぼけた顔ですが、看板犬としての自分をしっかりわきまえていて、いつも宿の玄関付近でお客さんを待っています。なぜかバイクの音がキライなので、ライダーの方は最初は吠えられてしまいますが、小次郎くんは友好的な性格なので、怖がらなくても大丈夫です。
 特に宣伝もしていないし、宿のホームページもありませんが、ここに来るお客さんがブログなどで小次郎くんを紹介してくれるので、今やすっかり福島の有名犬になっています。小次郎くんに会いに来る常連客も多いんですよ。
 冬の間は宿は休業になります。土湯温泉にある自宅でゆっくりと休養している小次郎くん。白髪が目立つ年齢になりましたが、病気もせずに元気いっぱいです。春になったら、ぜひ会いに行ってあげてくださいね。(文・写真/滝野沢優子)

2013年 11月 和歌山県南紀勝浦温泉 マリンちゃん

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有名まぐろ料理店の招きねこ。
でもまぐろよりキャットフードが好き!

和歌山県南紀勝浦温泉
マリンちゃん@まぐろ料理 竹原

 生まぐろ水揚げ高日本一の港町・那智勝浦。味自慢のまぐろ料理店がずらりと軒を連ねるなか、『竹原』は指折りの有名店です。ご主人の大の猫好きを知っていたのか、痩せこけた小さな猫がある日ひょっこり“ご来店”、そのまま竹原の子になりました。港町にちなんで付いた名前はマリンちゃん。
 人懐こいマリンちゃんはあっという間に人気者に。店先でお客様との写メに応じたり、ゴロンと寝そべって撫でてもらったり…。マリンちゃんに手土産を持って会いにくる熱烈ファンもいるそうで、この界隈では竹原の招きねことしてちょっとした有名人?です。
 毛艶のよい、ふっくらとした体は美味しいまぐろのおかげ…ではないようです。好物はキャットフード。まぐろをあげても喜んでくれないのだとか。何とも、驚きですね。舌が肥えているのかいないのか、どちらにしても見た目もすっかり招き猫のマリンちゃんは、今日も竹原の店先でたくさんのお客さんを接客していることでしょう。(文/太田水美 写真/髙橋祐次)

2013年 10月 大分県赤川温泉 リッキーくん

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久住の山中に湧く一軒宿に
賢い老犬が暮らしています

大分県赤川温泉
リッキーくん@赤川荘


 リッキーくんはもうすぐ20歳。大型犬で20歳近いとはすごい長寿です!赤川で生まれ育ったリッキーくんですが、若い頃には、数キロ先の観光施設や山向こうの法華院温泉まで繰り出し、「お宅の犬が来ていますよー」と電話がかかってきたこともあるんだそうです。母犬・モモちゃんも赤川の看板犬でした。頭が良くて性格のやさしい、愛され犬ちゃんでしたが、リッキーくんもまた、赤川を訪れる登山客のお供をしたり、遭難しかけた登山客の捜索をお手伝いしたりと、賢い看板犬として愛されてきました。お母さんのモモちゃんがいなくなったときには、本当にがっくりとしてしまい、しょんぼりと遠くを眺めたりしていたのだそうです。モモちゃんは、5年ほど前、山に帰った(山に出かけたときに姿を消した)という話でした。
 この夏、訪ねたときには玄関先に座り込んでいました。が、近づくと一段ずつそろりそろりと階段を下りて挨拶をしてくれました。見ているとほんとおぼつかない足取り。「いいよ、いいよ、下りてこなくても〜」と声をかけたのですが、ちゃんと近くまで来てくれました。律儀な犬ちゃんです。
 赤川温泉へは、10年ほど前、温泉達人の故・野口悦雄さんと共に取材に来たことがあります。もしかすると、その時のことを覚えていてくれたのかなあ?次にやって来た男性入浴客には挨拶なしだったし…。
 山の哲犬・リッキーくんに会えてほんと良かった。硫黄の香る温泉も変わらずいいお湯でした。(文/西村りえ)

2013年 9月 静岡県熱川温泉 チャメちゃん

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今まで出会った最年長ねこは
人間換算で100才越え!?

静岡県熱川温泉
チャメちゃん@山桃茶屋

 山桃茶屋のチャメちゃんは23才。片手にのるぐらい小さいときに、伊豆下田の美容院から、ここ熱川の里にやって来ました。長年、ここで暮らしているので、ねこ女将としての自覚も充分。名物へらへら餅を食べにきたお客さんに、挨拶してまわったりもしています。2度目にチャメちゃんに会ったときには、女将さんとご主人の間にちょこんと座って、おとなしく3人の話を聞いていました。ヒトの言葉を理解しているみたいな表情。いつか言葉を話し出すんじゃないかなと思わせるような渋みのある賢そうな顔付きです。人間の年齢に換算すると100数才。長生きの秘訣はどこにあるんでしょう?「マイペースなことと、つくばいの水など良い水を飲んでいることでしょうか」。自由に遊べる広い庭があることや、人の出入りがあって適度な刺激が受けられるのも良さそうですねえ〜、そんな話をしていたら、チャメちゃん、イスから下りて、とことこ外へ。玄関先の石畳のくぼみに溜まった雨水をべろべろ飲んでおりました。(文/西村りえ)

2013年 8月 秋田県杣温泉 力くん

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常連さんの名前を覚え、
玄関でお出迎えするおりこうワンちゃん

秋田県杣温泉
くん@杣温泉旅館

 原生林に囲まれ、野鳥のさえずりがこだまする森吉山の秘湯・杣温泉。山奥の一軒宿に暮らす力(りき)くん(13歳)は、宿のご主人・杣正則さんが東京からこの地に越して来た方に、仕事や住まいの紹介をしたご縁で頂いたフレンチ・ブリタニースパニエルのワンちゃんです。
 均整の取れた体格と美しい顔立ちに加え、とても大人しく、絶対に吠えたり噛みついたりしない優しい力くんはお客さんの人気者。でも人気のヒミツはそれだけではありません。なんと力くん、常連さんの名前をしっかり覚えているのです。ご主人が「明日佐藤さんが来るよ」と話しかけると、翌日玄関で待機し、佐藤さんをお出迎え。この歓迎ぶりに常連さんは大喜びで、力くんのために手土産を持参してくれることもあるのだとか。
 登山をするお客さんを途中まで見送ることもある力くんですが、ご主人が「今日はダメだよ」と言うとその日は絶対について行きません。「力、散髪だよ」と言うと、宿の前の橋にちょこんと座って散髪をしてもらったり、「お風呂だよ」というとシャワー室について来る……人間の言葉を理解できる賢い力くんのエピソードは他にもたくさん。明るく気さくなご主人と奥様、そしてお客さんからたっぷりの愛情を注がれ、秋田の大自然の中で幸せに暮らす力くんでした。(文/太田水美)

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